千寿会

日本の介護士不足 大内 貴志 介護士 届けベトナムへ日本のおもてなし介護

「どうして他人の面倒をみなければいけないのか?」

ベトナムの大学。当法人と提携をして介護士育成プロジェクトを進めています。

私がベトナムへ飛んだのは平成21年。千寿会として事業をイチから立ち上げる段階だったので、試行錯誤のスタートでした。現地を訪れて最初に感じたのは「介護」自体の認識の違い。ベトナムでは高齢者よりも若者の割合が多く「介護サービス」がまだまだ一般的ではなく、むしろ「なぜ家族でもない他人の面倒を見なくてはいけないのか?」という風潮がありました。そこで私がまずベトナムの学生達に教えたのは、ヘルパーとして仕事に向き合う介護観と介護職の必要性。介護には利用者本位という言葉がありますが、常に介護される立場になって考える見方が必要であり、利用する人の意思を尊重することがその方の力を引き出すことに繋がります。それは、単にお世話をすることとは違います。人間の生理機能や心理について勉強することで発揮される技術であり、これから高齢化社会を迎え家族介護では対応できなくなるベトナムの事実を説きながら、介護専門職の必要性を学生達に伝えてきました。

私たちの使命。日本の介護を、世界の介護にすること。

ベトナムの学生たち。瑞浪市の千寿の里で実習をしました。

学生との交流を通じて、相手の思いを察することを教えるのが「こんなに難しいのか」とつくづく感じました。それは、日本の文化や歴史、習慣に対する理解が関係し、ベトナム人だからこその価値観の違いがありました。でも、それがかえって私たちの教えがいにもなり双方の研修意欲を高めることになりました。この育成事業で介護を学んだ一期生は19名で、次の段階まで残った学生は9名。日本語の習得に努力し、日本式介護への興味を強く持ち、ある程度の理解を成し得た学生達です。近い将来、日本の介護士不足はもっと深刻な状況になる。それを救うためには海外の人材を含めた介護士育成が急務。このプロジェクトを通じて、世界の人たちに認められる介護観を身に付けることが、これから私たちが取り組まなければならない課題だと実感しました。

ベトナムの学生達の目が輝いていくのを実感

介護技術はもちろん、日本のおもてなし精神までを教えています。

私はこの海外事業を通じて、介護士として人間として大きく成長できました。これからのキャリアを積み重ねていくには、自己満足の介護ではダメで、みんなに認められる介護をしなくてはいけない。介護を受ける人やこれから介護を学ぶ人に、なぜその方法なのかを説明して、納得してもらえるように、自分自身で考えながら介護に携わっていきたいです。また自分が介護の指導をしたことによって、ベトナムの学生達の目の色がキラキラしていくのを実感できて、自分のモチベーションUPになりました。これからは教える立場としても多くの人に影響を与えられる、そんな介護士を目指していきたいです。